異常気象による干ばつが、水不足をさらに深刻なものにしている。
水消費で1番大きい割合を占めるのは農業
全水資源の3分の2を灌漑用に独占。
灌漑の普及は今後の農業生産増強のカギを握っている。
農業用水の取水過剰で、中国第2の河川、黄河がひんぱんに流れの途絶える「断流」を起こすようになった。
さらに悲劇的なのが中央アジアのアラル海だ。かつて世界で4番目に大きかった湖面が、綿花栽培などのために流入河川から大量の取水が続いたために半分に縮み、容量では4分の1になってしまった。
世界の多くの国々で、水需要が給水量を上回り始めている。ロサンゼルスなどカリフォルニア州南部では慢性的な水の供給不足に消費の急増が追い打ちをかけて、水需給がきわどい綱渡りをつづけている。
中国では水資源が底をついてきたことを物語るのは、地下水の枯渇だ。
水の供給量と消費量の収支は、毎年1600億トンもの赤字になっている。このために、地下水への依存が急増し早くも各地で水位低下や水脈の枯渇が問題になっている。
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(『失われた水源・黄河の危機』を見てください。動画です)
この砂漠地帯でも、かつて湿潤だった時期に降った雨が地下深くにたまっている。これは石油の探査とのときに見つかったほど深いところにあり「化石水」(化石水は、数千万年 - 数億年前に形成されたと見られている)と呼ばれる。
サウジアラビアはこれを地下数百~1000メートルのところから汲み上げて、水需要の75%をこれに頼るほど大量に利用している。
しかし、地下水は毎年平均52億立法メートルも減りつづけており、今世紀前半にはすべてを使い尽くす計算だ。
同様に地下水に頼る中国北部では、汲み上げ過ぎから北京北部では地下水の水位は毎年1~2メートルも下がり、すでに井戸の3分の1が枯れてしまった。
水の不足に加えて、世界の主要河川の半数以上で、枯渇や汚染が進行して、飲料水の不足だけでなく、農業や工業への影響もしだいに大きくなっている。
人間が水を最大限利用できるように、多くの河川がダムで流れが変えられ、コンクリートで堤防が固められてきた。同時に、埋め立てによって低湿地や湖沼は縮小の1途をたどってきた。
米国カリフォルニア大学教授のギャレット・ハーディンは、「共有地(コモンズ)の悲劇」と題する論文を発表した。これは大論争を引き起こし、その後賛否両論の論文が数多く発表された。
彼はこんな比喩を引用した。村共有の放牧地では、牧草の成長量に対して目一杯の数の牛が飼われている。ところが、ひとりの農民がさらに金儲けをしようと、勝手に放牧する牛を増やしてしまった。
当然、他の農民も追従して牛の数を増えて、牧草は食べつくされて村全体が所有する資源は悲劇的な損失を被る。牛を増やした短期的な利益は個人に帰するが、全体がその損失を受ける。ある意味では、これが地球環境問題の本質である。
彼の結論は、「共有地が自由と信じられている社会では、それぞれが最大の利益を追求する結果、破滅の道を突き進んでいくことになる」というものであった。
彼は、「悲劇を回避する手段として科学的解決の方策はなく、共有地の私的・公的な所有以外はない」、そうでないと、牛を増やした人と規制を守ろうとする人の間で、戦いになるしかない。
世界で一番深刻なのは、アフリカのサハラ砂漠のスーダンという国だ。
同国の北ダルフール州という私の調査地点では、過去30年間で人口は2倍に増え、それにつれて牛が2.3倍、ヤギが3.4倍、羊が3倍に増えた。
人が1人増えると家畜が4~5頭増え、薪が年間1トン分ずつ消えていくという社会で人口爆発が起きた。
しかも、もともと非常に乾燥性が強くて天然資源が脆弱。過去30年以上も最悪の内戦がつづいているが、表面的には民族抗争であっても、この自然の悪化が大きな原因になっていると考えている。
<国際紛争の火種>
・水の取り合い
エジプトー上流8カ国
イラク、シリア、トルコーチグリス川、ユーフラテス川
イスラエル、ヨルダン、シリアーヨルダン川
インド、バングラディッシューガンジス川
アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、-バラナ川
・汚染問題
フランス、スイス、オランダ、ドイツーライン川